エンタープライズソーシャル推進の枠組み

今回は、IBM Connectionsでの事例「ヤマトフィナンシャルがSNS利用率を99%にしたツールと利用促進策とは?」を元に、以下の「推進の枠組み」に当てはめてみました。どんな目的のなか社内で啓蒙活動を進めてきたのか参考にしてください。


Step1 なぜ今エンタープライズソーシャルなのか?
~組織における問題の共有化~

①営業担当者に属人化しているノウハウ
②営業会議で取り上げられるのは限られた案件のみで現場社員が得られる情報は乏しい
③思ったことを構えることなく言い合える環境がない
④他部門との意見交換の機会もほとんどなし

ポイント: 社内で熟議の場を設け、コミュニケーションに纏わる問題を顕在化。経営幹部との問題意識の共有

Step2 ソーシャルに関係する具体的な何をするのか?
~新しいコミュニケーション方法のデザイン~

①全員が自発的に参加できる社内の情報共有の環境を立ち上げ、活用していこう」という構想を打ち出す。(社長)
②SNSを使って知識の全面的な底上げ、新たな知識の創出への期待(企画部門)
③ブログ(知恵の種)・フォーラム(教えてYFC)・ファイル(YFC資料館)といったノウハウの共有の場をテーマを決めて組織に作成(運用部門)
②「ほめあい、育てあう文化」を活かして社員同士のモチベーションを高め、組織の生産性を高める施策(会社全体)

ポイント: 経営課題からソーシャルを使ったビジネス戦略を作成。特定部門のみでなく様々な部門と連携して計画立案。これまでのコミュニケーションツールと違いを区別しながら、会社全体の公式ツールとしてスタート

Step3普及に向けてどのような利用促進策を展開したのか?
~定着化のための啓蒙活動~

①使い方をまとめたわかり易いスライドショー作成しネットワークに公開
②身近なツールとして親しんでもらえるようサービスのネーミング変更や、キャラクターをデザイン
③プロフィールには顔写真を載せることにし、「顔の見える」コミュニケーションを会社として促進
④ビジネス部門含めた各部署から集められた十数名のプロジェクトメンバーによるコミュニティ運営管理
⑤経営トップや管理職も率先して活用し、社員の投稿に「コメント」や「いいね」でフィードバック
⑥そのほか、投稿を促す施策を打ち続けてきたことで一定の成果

ポイント: 根付かせるための数々の施策トップも率先して参加することで社員に安心感を生み出している。

Step4 振り返りと新たな目標へ
~定性的および定量的にプロジェクトの成功を測定することにより、実際のビジネスの関連性を可視化~

①ログをもとにどれくらいの人が積極的に活用したかウォッチ
②ネットワークに貢献した人を表彰する制度をつくり、文化の定着へ
③来月や来週ではなく “今” 決める、文化の定着へ

ポイント: 普段は言いづらい「失敗談」なども含めて発信を推奨。表彰制度も合わせて運用することで、オープンで発言しやすい雰囲気を醸成。

誰が :巻き込んでいった関係者
社長・経営幹部・経営企画部・十数名からなるプロジェクトチーム・IT・ビジネス部門長

 

情報の豊かさとは



人々の関心事はそれぞれ異なりますが、ハーバート・サイモンによれば組織の <情報の豊かさ>とは、<膨大な情報源>から、人々の(希少な)関心事を効率的に<配分>できている状態を指します。それを式にすると以下のように表すことが出来る。

        新規性 × 話題性

情報価値  = ————————

         近接性(距離)

例えば、遠く離れた国の旅客機が行方不明になったことは重大な事ですが、隣人が行方不明になったということは規模が小さくとも身近な故に話題にのぼります。また、興味がなくともiPhone発売というニュースの 新規性 は情報に価値を加えます。

これらの変数のうちどれを重視するかは個人の趣向によって異なりますが、いずれも満たさない情報は、たとえ手間暇かけて分析したビッグデータであっても骨折り損に終わります。大規模な予算で作られたTVよりも、Facebookのようなソーシャルメディアが存在感を高めるのもこうした理由があると思います。

20世紀のTVや新聞といったメディアは技術的に分母を大きくすることが出来なかったため、薄く広い情報を流すことで分子を大きくしてきました。しかし、現在では技術革新によりコストをかけずに、それぞれの趣向に沿ったパーソナライズされた情報も提供できるようになりました。つまり、企業の中でもこれをどう活用しようと考えなくてはなりません。

現在、世界の選択可能な情報量は消費可能情報量の2万倍と言われますが、これらをすべて消費することは不可能です。またそれをする意味もないでしょう。これから必要な情報戦略のひとつの鍵は、YammerやDelve のようなソーシャルテクノロジに用いた個人個人の要求に合わせた効率的な情報配分なると思います。それによりはじめて、膨大な「データ」は単なる文字の羅列から、価値ある「情報」に姿を変えるわけです。

The Responsive Organization

YammerのCTO、Adam Pisoniが “The Responsive Organization” と題したメッセージとともにエンタープライズソーシャルの重要性を示しています。この言葉は「Responsive Web Design」という言葉を考えるとわかりやすいでしょう。Webデザインの世界では、次々に登場するスマートフォンや、コンピューター、タブレットなどのデバイス環境に、デザインをいち早く対応させていくことが非常に重要なタスクになっていますが、その対応が少しでも遅れると売上に非常に大きな影響を与える。故にレスポンシブなデザインは生命線ともいえるわけです。The Responsive Organization とはこれを組織に置き換えた考え方であり構えです。「変化の激しい市場に対して」「顧客の細やかなニーズに対して」レスポンシブでなければこの先大企業ですらどうなるかわからない。ジャック・ウェルチの名言にあるように、「組織の変化の速度を外部の環境変化の速度が上回れば組織の終焉は近い。」 いま求められるのは組織をあげた対応力です。


スペインのファッション小売業者にZARAがあります。 ZARAでは店舗スタッフが、顧客が店にない特定の種類の衣類を求めている事に気付いたならば、即座にその情報を製品チームにフィードバックすることによって、2週以内にプロトタイプの製品を店舗にデリバリーされる仕組みがあるといいます。ZARAではそうした試みが日常繰り返されています。ITの世界ではアジャイル開発の概念に慣れていますが、不確実性の高い未来に対しては、膨大な資源を投資することなく簡単にテストすることができることが極めて重要になる。彼らは現場に十分な権限を与えることで、顧客のニーズに対して迅速な軌道修正を行い、また社内ネットワークを介して様々な専門家とダイレクトにつながることで、通常の何倍ものスピードで意思決定を行う。そうしたポジティブなフィードバックループを組織の中にデザインすることで組織の対応力を高めているのです。

時代の移り変わりは激しく、インターネットのタイムラインの上では常に顧客からのフィードバックであふれています。激しい変化に組織が迅速に対応するためには、迅速なコミュニケーションが必要になりますが、従来型のメール リプライにかかる所要時間は、なんと平均5時間とされています。これでは対応している間に顧客のニーズは変わってしまいます。これまでのコミュニケーション方法を改め、リアルタイムな情報交換とネットワーク活かしたコラボレーションこそが成功の鍵となる。これを助けるのがエンタープライズソーシャルだと思います。

Pisoniは「The Shift」としてレスポンシブな組織のつくる6つの要素を示しています。またPisoniは社員にチカラを与えモチベートさせることが重要だということを繰り返し強調し、下記の要素をプロセスに刷り込み体系化することが変化に強い組織を作りあげると説明しています。

「多孔現実」をハックする

かつては、同じ物理空間を共有しているという事実性が、人と人との親密度に大きな景況を与えていました。しかし、いまはいつも近くにいるからといって特別に親しいとは限らない。例えば、女子会最中にFacebookに写真を投稿する光景にみられる <隣の知人より遠くの他人>  という現実。どこまでも遠くにいる人と、自分としてのコミュニケーションが出来るわけです。

かつての馬車から自動車へという移動手段の発達が、特定地域の人との関係性にコミットメントしなくてはならないという必然性をなくしたように、テクノロジーは選択の自由度を格段に高めます。その結果、いまは物理的に近くに存在していても、そこで関係性や共同性が生成されているわけでも、必然性もないという親密性の変容があるわけです。

社会学者の鈴木謙介氏が、いまは至る所にいても、複数の意味空間へ繋がる <孔> が空いていると「多孔空間」という言葉で説明しているのですが、ウェブにより多孔化すると、意味空間と物理空間が次第にずれ始めていく。<孔> から次から次へと外部と情報のやり取り(例えば授業中のTwitter)が発生し、意味空間を保つのが困難になり、多孔化の果てには、親密性の変容、公共性の困難が立ち上がり、そして物理空間の中の存在がバラバラになっていくと指摘しています。

物理空間の存在がバラバラになっていくと、存在をまとめようとする力が働くことがあります。スマホいじるの禁止、オンライン禁止、のような外からの情報流入が制限され、物理空間では威厳のある人も、別の空間に移るとそれを保つことができなくなるわけです。しかし、このような「多孔現実」をハックすることで、より新しい面白いコラボレーション空間を作ることができるのではないでしょうか。

ビジネスの場で考えれば、物理的なオフィス空間と論理的なウェブ空間の意味を別々に考えるのではなくシームレスに繋がる公共空間をデザインし、<物理空間を共有しているという事実性> 以上の意味性を流入させることができれば、人との関わり方も、働き方も今とは全く別の形に変わってくるわけです。

たとえば、物理的な距離を縮めることはできないとしても、「認知的な距離」をコントロールすることで近接性や親密性を高めていくような設計はできるはずです。「遠く離れた国があるとしても、飛行機や列車を使ってそこに簡単にいけるということがわかればその場所は心理的に近く感じる。」「今までよく知らない人だったが、同じ中学校を出ていたと分かった途端その人が近く感じられる」「アフリカの奥地で偶然であった人が日本人だったというだけで大きな感動を味わってしまう」そういう認知体験を多く作り出していくことが、コミュニケーションにとってポジティブな影響を与えるわけです。

オフィスの生産性という際、物理的なものにばかり注目してしまうのは余りにもったいない。そうしたテクノロジーを使ったこれまでにない意味性を持たせる空間デザインがますます重要になってくるのではないでしょうか。

働く動機の二要因モデル

心理学者の市川伸一氏は、<学ぶ意欲の心理学>という本の中で、人が学習するモチベーションは大きく次の6つのタイプに分類されると説明しています。

  1. 実用志向(仕事や生活に活かすために)
  2. 報酬志向(報酬を得る手段として)
  3. 訓練志向(知力を鍛えるために)
  4. 自尊志向(プライドや競争心から)
  5. 充実志向(学習自体が楽しいから)
  6. 関係志向(他者につられて)

報酬のために行われる仕事と、夢や目標のためになされる仕事では、パフォーマンスに違いが出てくる。前者は最低限のコマンドを実行するだけということになりがちで、後者は積極的な問題解決や他者とのコラボレーションを求めていく。

ダニエル・ピンクの著書「モチベーション3.0」は、人のやる気を活性化させるために内発的動機付けに焦点を向けた本でしたが、市川氏がいう ⑤ の充実思考はその典型にあたり、逆に②の報酬思考と呼ばれるものは、外発的動機付けの典型となる。組織内での自らの地位を獲得するためのプロモーションこそが重要と感じているものであれば、仕事での振る舞いも変わってくるというわけです。

上図は「学習動機の二要因モデル」をもとに作成したものですが、上段は「仕事」下段は「作業」になりがちです。

市川氏によれば、上に属する者は物事の「本質」や「なぜ(Why)」の部分に深く関与することから、問題に例外が発生した際の柔軟性や解決力が高いとされ、下に分類されるものは、物事に対しての「処理」が優先されるため例外対応に弱くなるとされるます。

このような社員の志向性を知った上で計画を立てると、効果的に社員に刺激を与えることが出来る筈です。

マイクロソフトのソーシャルテクノロジー



先日ガートナーが発表した マジッククアドラント の中でマイクロソフトがSocial Software in the Workplaceの領域でリーダーとしての評価を受けていました。

その昔ティム・オライリーはWeb2.0という言葉を、「WEBを通じて旧来の情報の送り手と受け手の固定化、一方的な流れから、誰でもが情報を発信できるようなった状態」と説明したが、この言葉は現在「ソーシャルテクノロジー」としてほぼ置き換えられているように見える。

ソーシャルテクノロジーの本来の価値は(Yammerのような)特定のテクノロジーを使いことなすことではなく、ひとりひとりの状況に合わせて手段を選択してコミュニケーションできることにあるのだとすれば、ガートナーの評価は妥当なものと考えられる。必要なコミュニケーションをとりたいと願う人に、どれだけ幅広い機会を与えているかが、企業成長においても重要なカギであり、それがシームレスに繋がっているということがやはりツールの選定のポイントになると思います。

”Delve” の価値とイグノランスマネジメント

この10年でインターネットの通信速度は750倍、CPUの速度は500倍と速くなったといわれますが、自動車のエンジンの速度はたった1.1倍しか速くなっていないという。では、果たして人間の速度はどうなっているのでしょうか? 基本的には何も変わっていないわけです。また、今後どんなに頑張ろうとも人間の走るスピードが倍になることもなければ、頭処理のスピードが倍になることも考えづらいわけです。

その一方で、世の中で生成される情報の総量は加速度的に増えるので、その中から必要な情報をいち早く見つけだしたり、価値ある情報(アイデア)を持った人と知識の交換が出来れば、それは企業としての競争優位ということになる。

「イグノランスマネジメント」という言葉があります。 かつて流行したナレッジマネジメントが、「情報を持っている人」が「それを必要とする人」にとって利用し易い形となるように、暗黙知を形式知化しようとするものだったとするならば、このイグノランスマネジメントは「情報を知らないこと」をマネジメントするというものです。つまり、言い換えれば「本当は情報が必要なのに気づいていない人」「知っているつもりだけれども、もっと知ってて欲しい人」に対する情報マネジメントの形式です。

一般的な検索結果との違いは、検索は 必ずユーザーの問題意識が必要となり、ユーザーがそもそも気づいていないトピックに対して、「人」や「情報」を結びつけることは難しいわけです。Delveについては先日紹介しましたが、とりわけイノベーションを起こそうとする人々には効率的に情報を探すという取り組み以外に、全く別のところから新しい知識を持つ者同士の新結合というアプローチが有効になってくる。


Delveには他のコンペディターに決してまねできない技術があります。それは、情報提供の根拠となるもののメタ情報、つまり分析範囲の広さと深さとも言えます。マイクロソフトは、業務において必要なメール環境、スケジュール管理、ソーシャル、コンテンツマネジメント、検索、ディレクトリ、音声、Webカンファレンス、何より「Office」という、ツール/プラットフォームをすべて抑えており、それらの情報を駆使して、様々な角度から分析処理を行い「本当は情報が必要なのに気づいていない人」に対して、情報を提示することができるわけです。 このようなプラットフォームを抑えたベンダーは他になく、この新結合を起こすための適切な「人」や「情報」を示してあげることができる今最も期待できるポジションにいるベンダーといえます。

また、Delveはマイクロソフトの下図に記すビジョンのなかでのSocial Layer と呼ばれる重要なポジションに位置づけられる。つまり、ソーシャルレイヤーは「情報を必要とする人」「本当は情報が必要なのに気づいていない人」「知っているつもりだけれども、もっと知ってて欲しい人」に対して、 上位レイヤー(Yammer、Office365、SharePoint、DCRM、LOB Apps)で生成された情報を適切に繋いでいくために機能していく。今ある情報を活用する、これからの情報を活用するという点において、今後 Delveは非常に強力なツールとなっていくはずです。