Slack vs Teams (比較)

適切なツールを見つけることは、あらゆる仕事において重要なことです。ネジを回すには、ハンマーではなくドライバーやドリルが必要です。そしてこれと同じことがインフォメーションワーカーにも言えます。多くの場合ユーザーはプロジェクトのなかで協働作業を行っています。一緒に働く方法はたくさんありますが、そこで現在注目される2つのアプリケーションがあります。「Slack」と「Microsoft Teams」です。

ここ数年、Slackは職場のコラボレーションツールとして、大きな人気を博し、最高のコラボレーションプラットフォームを目指すレースにおけるトップランナーとなりました。しかし、わずか数ヶ月前に別のプレイヤー、 Microsoft Teamsがこの分野で成功することを約束するようになりました。

Slackにはいくつかのアドバンテージがありますが、Microsoft Teamsはいくつかの領域でリードしています。もし組織が既にOffice 365のサブスクリプションをもつ場合は、その多くが無料で提供されているため、展開の意思決定が容易になるはずです。 下記にMicrosoft Teamsが優れる7つの点を紹介します。

【Microsoft TeamsがSlackに比べ優れている7つのこと】

1)モバイルデバイス管理

Slackが多用途性を発揮する理由の1つは、あらゆるモバイルデバイスからアクセスできることです。マイクロソフトは、この分野に残されていないことを明らかにしなければならず、Teamsはすべての主要なモバイルオペレーティングシステム(iOS、Android、Windows Phone)でこの要件をサポートしています。

ここでMicrosoft Teamsに優位な点は、Intuneを使用したモバイルデバイス管理で企業に必要なすべてのコントロールが行えることです。このサービスにより、企業のデータを保護しながら、いくつかの機能を提供できます。

  • 従業員が会社のデータにアクセスするために使用するモバイルデバイスを管理します。(MDM)
  • 従業員が使用するモバイルアプリの管理。(MAM)
  • 従業員のアクセスと共有方法を制御することで、企業データを保護します。(MCM)
  • デバイスとアプリケーションが企業のセキュリティ要件に準拠していることを保証する。

2)Office 365統合

マイクロソフトの開発者は、ユーザーが会話や文書を処理するためにデスクトップ上に開いているウィンドウの数をなるべく少なくしたいと考えています。そこで彼らはチーム内で行われるコミュニケーションを統一するためにTeamsを設計しました。

その1つとして、TeamsはExchangeとSkypeにうまく統合されています。組織にOffice 365サブスクリプションがある場合は、ユーザーはOutlookまたはSkypeに切り替えて電子メールを送信したり、同僚に電話をかけたりする必要はありません。

これにより、Slack:シームレスな統合と比較した場合のTeamsの利点がもたらされます。このツールを使用すると、Office 365のコラボレーション全体のスペクトルが得られます。これにより、あるアプリケーションから別のアプリケーションに切り替える必要がないためユーザーの生産性が向上します。

3)3rdパーティインテグレーション

他のOffice 365アプリケーションとの連携以外にも、Teamsはサードパーティのアプリケーションと統合します。サードパーティインテグレーションが人々がSlackを選ぶ大きな理由の1つなので、Microsoftはこの分野にかなりの力をいれています。

Teamsには、ZendeskやHootsuiteなど約150のサードパーティインテグレーションが含まれています。Workato のWorkbot for Teamsは、コラボレーションプラットフォームの重要な部分となるボットの実装にも役立ちます。マイクロソフトは現在、Office 365を使用していない外部の連絡先がプラットフォームに参加できるようにするなど、より多くの機能を追加しています。

4)タブ

マイクロソフトは、タブと呼ぶ機能を実装しました。これにより、ユーザーはTeamsのプラットフォーム内で様々なインタラクティブなコンテンツを受け取ることができます。これにより、ユーザーはさまざまな種類のコンテンツを分離して共有できるため、会話内の情報を減らすことができます。


5)インライン返信

コミュニケーションの流れについて言えば、Slackのユーザーが依然として要求している機能の1つはインラインでの返信です。チームは既にこれを持っており、ユーザーがコメントや質問に直接回答できるようにすることでトピックの会話を大幅に改善します。また、数時間の会話が欠けている人にも明快さを保つのに役立ちます。

6)18の異なる言語のサポート

チームが複数の国にまたがっている場合は、18言語をサポートするチームのメリットがあります。スラックは英語のみをサポートしています。

Teamsがサポートするすべての言語は次のとおりです。

中国語(簡体字および繁体字)

チェコ語

デンマーク語

オランダの

英語(米国)

フィンランド語

フランス語

ドイツ人

イタリアの

日本語

韓国語

ノルウェー語

ポルトガル語(BR)

研磨

ロシア

スペイン語

スウェーデンの

トルコ語

メインボット(T-bot)はこれらの言語のクエリにのみ応答することに注意してください:

英語(米国)

フランス語

ドイツ人

スペイン語

7)セキュリティ

チームは機密データ漏えいの防止に役立つDLPを提供します。Slackは同等のものを提供していません。

マイクロソフトはコンプライアンスとセキュリティ監査の開発に多くのリソースを投入しているため、クラウドプロバイダーが規制を遵守しなければならない業界にいる場合、Teamsは必要なものを提供できます。

まとめ)どちらがベストですか?

Microsoft TeamsとSlackは非常に似ています。後者はよりカスタマイズ可能で、ショートカットなどの優れた機能を備えていますが、Microsoftは数百万人のユーザーから受けた経験とフィードバックを使用してTeamsを設計しました。Microsoft TeamsはOffice 365の他の部分とシームレスに統合されており、セキュリティ機能はSharePointやExchangeで実装されているものに基づいており、脅威やデータ漏洩に対しても同じ保護を提供します。

Slackを使う価値はありますか?

それは場合によります。特に規制がなく、ビジネス全体のソリューションを探していない場合においては有効なツールとなるでしょう。しかし、Teamsはエンタープライズ用の高いガバナンス機能を備え、特にOffice 365のサブスクリプションをお持ちの場合、Teamsはすでに使用準備が整っており無料で利用できます。

安全な情報共有について

A社のある担当者が業務遂行のために必要な情報を、一緒に仕事を進めているパートナー企業のB社にメールで提供しました。
B社では受け取った情報をもとに修正をかけ後に資料を共有しようとしましたが、今度はサイズが大きくメールで送れなくなってしまいました。そこでYammer を通じて共有することの許可を問いました。
すると・・・A社の一部の関係者が、「Yammerで情報共有するなど何事だ」と怒り始めました。
「Yammer=クラウド=危ない」という先入観なのでしょうか?でも、なんとなく言いたいことはわかります。

A社が気にしていることは、「Yammer 上に自社の重要情報が保管されることによって危険にさらされる」ということなのですが、果たして本当にそうでしょうか?

ではメールならOKですか?SharePoint ならOKなのでしょうか? 「宅ファイル便」ならOKですか???それらはすべてクラウド上にあるデータベースです。

極端な話かもしれませんが、 B社がOffice 365やGoogle Appsなどのクラウドを利用している企業ユーザーであれば 受け取った情報は 常に既に クラウドに保存されています。

すなわち、A社が情報を送った時点で、外部の攻撃者からの脅威にさらされているので、そこでいまさらYammer云々でリスクの一部を指摘しても意味があるように思えません。

もっと言えば、脆弱なファイル管理システムなどを運用している会社と取引であれば、さらにリスクは高まります。

「クラウドを使うな」と主張することでリスクを下げようと考えるのであれば、これからの時代は「クラウドを利用している企業とは取引をしないこと」を徹底しないとA社が主張するリスクは回避できないと思います。

MSさんが「クラウド時代のセキュリティの境界線がファイアウォールではなくなった」と主張しているのは、そういうことではないでしょうか。

例えば、A社が自社で構築した、なんらかの「ファイル共有の仕組み」を用いて情報共有することが安全なのだと主張したとします。たしかに、そこに置いてある情報が、誰からもダウンロードされない、あるいは盗み取られない限りは安全です。

でも、情報共有の仕組みなわけなので、結局ダウンロードすれば受信者はすぐに他のクラウドにデータをGoogle Appsに移すわけです。これがセキュリティの境界線がファイアウォールでなくなったということの意味でしょう。

問題は「どの場所で情報共有するのか」という境界線について議論することではなく、RMSのように「情報がどの場所でどのように共有」されたとしても「関係者以外に情報が漏れない仕組み」を考えていくことが、安全な情報共有を行うために有効なのだと思います。

今回、特に新しい話をしているわけではないです。

しかし、おそらく今後5年間で「情報系」と呼ばれるような仕組みの多くはクラウドに転換されていく思われます。その時に、自社だけが「クラウドで情報共有しないでください」主張することに、どれほどの意味を持つのだろうか? とふと疑問に思った次第です。

Give / Let’s upgrade our world !

Advent Calendar が回ってきました。 先日レドモンドにあるマイクロソフトの本社を訪問したのですが、その時に見かけた看板に記された「Give」「Let’s upgrade our world」と二つの言葉がとても印象に残ったので、今回はこれとOffice 365 をこじつけて、これからの働き方のヒントについて書こうとおもいます。

<キーワードはGive>

ぼくが数年前から参加しているコミュニティのひとつにEGMフォーラム(Employee Generated Media Forum)という場があります。このコミュニティの中で大切にしている価値観のひとつに “Give and Given” というものがあるのですが、これは「与えていこう」という価値観です。

一般的によく使われる “Give and Take” というのは、「何かを与えたら代わりに何かをもらう」という、ある種の交換条件の中で人間関係性が成り立つものですが、Give and Given ではとくに相手からは求めません。「相手に喜んでもらえば、そのうち相手から溢れた幸せが 自分のところに落ちてくるさ。」そんな気持ちを大切にしてコミュニティ運営をしています。
損得勘定でコミュニティを運営しても決して魅力的な人や情報は集まらないからです。

こうした考え方はビジネスにおいても同じであることが証明されています。「これだけのお金がもらえるからやる」「偉くなれるからやる」、そうした交換条件からは本当に社会に役立つアイデアは生まれてこない・・・。ダニエル・ピンクのモチベーションのがあまりに有名ですが、これからは損得勘定とは別のところから発生する「Give」という考え方がとても大切になってきます。この看板にはマイクロソフトがこうした価値観に対して真剣にコミットしイノベーティブな企業であろうとしている姿が表れているではないでしょうか。

「Let’s upgrade our world」

もうひとつこの看板には小さく「Let’s upgrade our world」 という言葉が記されています。昨日「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2015」というリストが発表されたのですが、このリストにある本の多くは働き方のupgradeの話に触れています。

最近マネジメントでよくいわれる言葉に「コントロールからエンパワーメントへ」ですとか「ヒエラルキーからホロクラシーへ」などさまざまなコンセプトが聞かれますが、基本的にはすべてEGMとかCGMに代表されるような個人へのエンパワーメントを可能にするテクノロジーの存在が前提になっています。つまり、世界の経営者はいまこれらの本に書かれるようなUpgradeを必要としている、<イコール> それを支えるテクノロジーが不可欠ということなのです。

Office 365は世界をUpgradeできる優れたコラボレーションツールであることに違いありません。しかし残念ながら優れたツールを使うことが優れたマネジメントを生みだすということは必ずしも<イコール>となりません。

たとえば企業において「コミュニケーションの活性化」という課題に対し、すぐに新しいツールの話を持ち出され、こんな機能やあんな機能を取り上げることがありますが、前提の考察がスキップされていることが多々あります。

ツールの前に、会社の相互扶助に関わる仕組みはどうなっているのか、Upgradeすべき企業文化はどういったものなのか。そうした問題をサポートするのかしないのか? つまりこうしたスペックのハコをつくりますという事の以前に前提があるだろうという事です。それを問題をスルーしては、いくら素晴らしいツールの話を持ち出しても働き方のUpgradeは決して上手くいかないでしょう。

Office 365 は 社員のどのようなコミュニケーションをサポートし、どのような触媒になろうとするのか? そうした問い直しがいま必要になってきていると思います。
年末年始もし時間にゆとりができたらこのリストにある本を手に取ってみてはいかがでしょう。きっと働き方のUpgradeに役に立つヒントが多く隠されているはずです。

Office 365 でコラボレーションできない理由

これまでSharePointやExchangeなどのバージョンアップを行なうには、その都度そこにかかる費用から、「何故バージョンアップするのか」「それを利用する価値はどこにあるのか」という熟議の機会が設けられ会社としての意思決定がありました。

しかし、実質的にバージョンのないOffice 365のようなクラウドサービスでは、面倒な議論をせずとも次々と新しい機能が使えるようになった為、それがかえって社内で熟議の機会を失わせ、戦略策定とコミットメントが曖昧なままに放置されてしまうということがあります。

熱心な担当者が、いくら必要性を説いても、上からは「費用がかからないのであれば、適当に試してみてよ」と既読スルー状態で話し合いの対象に上らないという話をよくききます。

WordやExcelの話であれば、個人の裁量に任せられるものですが、会社全体で機能させなければならないコラボレーションの機能は、全員で使わないと効果が出ないのでルールや作法も含めたコミットメントが不可欠です。

導入当初に定義されなかった機能が、いつになっても使われない理由はこうした背景がひとつにあげられます。しかし、ここで見落とされているのは、クラウドサービスでは確かにバージョンアップに費用はかかりませんが、それを利用しないことによる機会費用の大きさではないでしょうか。

クラウドを用いた ワークスタイル改革 を行うことにより、50%近い成長を遂げた会社がありますが、これが半分の成長で止まってしまうということは、金額的には数千億を支払ったことになるわけです。これは余りにもったいない話です。

面倒な議論をさけコストを極大化するのも一つの選択になりますが、メリットと見えないコストも併記して選択を問うべきだと思います。クラウド時代では、「何を改革しなくてはならないのか」というマインドセット設定や、問題そのものを見極め整理する能力含めて、「改革」をしていかなければならない。そうした新しいチャレンジが必要になると思います。

社内コミュニケーションの デザインについて

エンタープライズソーシャルに期待する効果として、コミュニケーションの活性化というものがあります。そこには、形式的で一方通行な「報告」や「質問に対する答え」というやりとりではなく、多数の人からなるダイナミックな情報交換から生み出される「新しい知恵」というものが期待されるわけです。

しかし、いくら仕掛け側がそういうダイナミックなやり取りを期待しても、そもそも普段の人間関係やコミュニケーションの状態がそういうコミュニケーションを推奨していない状況であれば、いくらオンラインに集会場をつくっても上手くいく筈がありません。たとえば、上司を押しのけて<わたしとしての意見>を主張することが善とされない社風があったり、<確実な>発言しか(思い付きの発言は)認められないという状況があれば、エンタープライズソーシャルが新しい意見に満ち溢れることはないわけです。

一般的に伝統的な組織であればあるほど、歴史に刻まれたコミュニケーション作法が多く存在し、固定化された人間関係性があります。そこに異質な価値観を持つものや、これまでの人間関係を崩すような影響を与えるようなコミュニケーションが発生するとなると、当然そこには「排除」の力が働きますので、<何故そのコミュニケーションが必要なのか?>という共通前提が組織内に共有化されることが大事となります。

H・コートニーという学者が “Strategy Under Uncertainty” という論文で、不確実性には4つのレベル <①確実な未来 ②選択的な未来 ③一定幅の未来 ④不確実な未来>があると述べているのですが、②のようにA/B/Cのような選択肢の中から合理的なものを選ぶためのコミュニケーションと、④のように不確実性の極めて高い状況で必要とされるコミュニケーションとは異なります。

ある企業では、社内SNSは意見の<発散の場>と定義しました。それに対して、これまでの会議や同等の機能を持った場は<収束の場>として区分され、①~④これらの全体の流れをビジネスプロセスに組み込むことによって社内SNSを無計画な集会場で終わらせることなく一定の価値を生み出しています。それを彼らは<コミュニケーション デザイン>と呼んでいるのですが、コートニーが “Strategy Under Uncertainty” というように、不確実性の高い状況下には、組織にふさわしいコミュニケーションが何か、我々にこのコミュニケーション テクノロジーをどう適用することができるのか、そういった新しい議論が必要なのではないでしょうか。

There is no alternative

エンタープライズソーシャルという戦略は、理論的には100%正しいと思います。英国元首相のサッチャーの言葉で「There is no alternative」、つまり「これ以外の方法はない」という言葉がありますが、正にその通りだと思います。ただ、これが本当に実現できるかどうかはわかりません。これは経営の強い決意をもって実行してもらわないといけない。ですから「ソーシャルが正しいかどうか」を議論するよりは、「本当に実現できるかどうか」を議論するほうが大事になります。

今年も各地で開催された大規模なカンファレンスでは、様々なスピーカーにより「なぜ今エンタープライズソーシャルなのか?」ということが語られていました。それを多くの参加者が評価しました。「あの人の言っている事は正しい」という意見です。様々なユーザーと技術者と会話をしましたが、彼らも同意見でした。「エンタープライズソーシャルというビジョンは正しいので、きちんと実行できること。それに尽きる」ということです。

ソーシャルであれワークスタイルの改革であれ、これらは大きな変化ですから、これまで存在した様々な習慣や常識を変えていかなければなりません。現在、日本企業が大きなイノベーションを生み出せていない状況が続いていますが、短期に問題のギャップを埋める方法はあったとしても、長期には再建が必要になってきます。

ビジネスを成長させるためには、様々な「事」を変えて進めなければなりません。これらは否定しようがないことです。まさしく、There is no alternativeです。繰り返しますが問題はこれを実現できるかどうかです。まだ道のりは、相当遠い状況だと思います。

最近、私はエンタープライズソーシャルの「起承転結」という言葉をよく使っていますが、「起」はグッドスタートで、「承」はディベロップメントです。現在出されている戦略は満点からはほど遠いですが、今までの戦略より、はるかに内容があると思っています。これから問題になるのは「転」、つまりターンです。この評価は、経営者を含めてどれだけ本気で加速させることができるかによって決まります。「転」がうまくいくかに応じて、「結」が決まってきます。

ソーシャルが成功するかどうかは、社員に目的がどれだけ支持されるかに左右されますが、最も重要なのは経営者の意志です。しかし問題は導入の後です。社長といえ改革によって360度敵に回すことはできませんので、やっぱりどこかに集中してやらないといけない。インフルエンサーという人がいますが、そういう人々と協力し、どのように、どういう順位で改革を実行していくのかということが必要になってきます。

先日、面白いと思ったのは、ある企業のドンが「私はこういう意見をもっていて、前田さんとは違う。でも、ソーシャルは応援しますから」と言ったことです。ある分野で意見がくい違う人でも、ほかの分野では手を組むことができるわけです。誰と手を組むか。その駆け引きが重要です。新しいことを始めようとすると、必ず抵抗勢力が現れます。その設定が戦略的アジェンダです。「これから何をしていけばよいのか」会社の中にはそういう戦略を立てるのに優れている人が必ずいますので、そういう人と連携してうまく回していってほしいと思います。また、会議で決まったことは役員会議で決定されますから、そこで決定されたことに関しては決定的な影響力あります。そうした道筋を立てていくことも大事です。

基本的に、新しいことを始めるには、何にしても「壁」と呼ばれるものがありますので、その中から何をやっていくかです。それを突き崩す装置として、まずはスモールスタートとか部分適用とかがありますが、それはうまくやってほしい。そこで実績を上げて大きな壁を壊していくのがひとつのやり方です。数え方によりますが、障壁の数は5〜10程度です。だから、年間2つずつそれを壊すという目標を決めてやっていけばいい。2つであれば、360度敵に回すことはないので現実的です。3〜5年の長期プロジェクトを築いて、毎年2つくらいやっていけば、ほとんどの問題は片付くことになります。

改革をボーリングで例えれば、センターピンはやはり経営者です。改革は経営者の意志に尽きます。新しいビジネスを立ち上げるときにでも言えますが、なにかを始める際には不確実な要素はたくさんあっても100%確実で始められるものはそうそうありません。つまりは、多くの社員が半信半疑な訳です。 しかし、そういうビジネスを始められるのは経営者が強い思い入れを持っているからです。「こんなビジネス果たしてうまくいくか」と思った人もたくさんいるようなものでも、「xxさんがそこまで言うならやろう」ということになるわけです。だから、本当に改革に必要なのは経営者の思い入れです。

センターピンが倒れると次はどのピンが倒れるかという「わくわく感 」が広がっていきます。 アジェンダにはそういう要素が大事です。「難しいことはわからないけど、面白そうだな 」「これをやれば、会社は良くなりそうだな 」という「 Fun」な要素を沢山いれていくが大事です。「Fun」であれば、自然にそれか広がっていきます。コミュニティーマネージャーと呼ばれる人は、これを是非大切にしてほしいと思います。

多くの企業に必要なのは戦略的なアジェンダの設定です。そして「事」を変えるための前向きの施策イシューでの議論を期待しています。

エンタープライズソーシャル推進の枠組み

今回は、IBM Connectionsでの事例「ヤマトフィナンシャルがSNS利用率を99%にしたツールと利用促進策とは?」を元に、以下の「推進の枠組み」に当てはめてみました。どんな目的のなか社内で啓蒙活動を進めてきたのか参考にしてください。


Step1 なぜ今エンタープライズソーシャルなのか?
~組織における問題の共有化~

①営業担当者に属人化しているノウハウ
②営業会議で取り上げられるのは限られた案件のみで現場社員が得られる情報は乏しい
③思ったことを構えることなく言い合える環境がない
④他部門との意見交換の機会もほとんどなし

ポイント: 社内で熟議の場を設け、コミュニケーションに纏わる問題を顕在化。経営幹部との問題意識の共有

Step2 ソーシャルに関係する具体的な何をするのか?
~新しいコミュニケーション方法のデザイン~

①全員が自発的に参加できる社内の情報共有の環境を立ち上げ、活用していこう」という構想を打ち出す。(社長)
②SNSを使って知識の全面的な底上げ、新たな知識の創出への期待(企画部門)
③ブログ(知恵の種)・フォーラム(教えてYFC)・ファイル(YFC資料館)といったノウハウの共有の場をテーマを決めて組織に作成(運用部門)
②「ほめあい、育てあう文化」を活かして社員同士のモチベーションを高め、組織の生産性を高める施策(会社全体)

ポイント: 経営課題からソーシャルを使ったビジネス戦略を作成。特定部門のみでなく様々な部門と連携して計画立案。これまでのコミュニケーションツールと違いを区別しながら、会社全体の公式ツールとしてスタート

Step3普及に向けてどのような利用促進策を展開したのか?
~定着化のための啓蒙活動~

①使い方をまとめたわかり易いスライドショー作成しネットワークに公開
②身近なツールとして親しんでもらえるようサービスのネーミング変更や、キャラクターをデザイン
③プロフィールには顔写真を載せることにし、「顔の見える」コミュニケーションを会社として促進
④ビジネス部門含めた各部署から集められた十数名のプロジェクトメンバーによるコミュニティ運営管理
⑤経営トップや管理職も率先して活用し、社員の投稿に「コメント」や「いいね」でフィードバック
⑥そのほか、投稿を促す施策を打ち続けてきたことで一定の成果

ポイント: 根付かせるための数々の施策トップも率先して参加することで社員に安心感を生み出している。

Step4 振り返りと新たな目標へ
~定性的および定量的にプロジェクトの成功を測定することにより、実際のビジネスの関連性を可視化~

①ログをもとにどれくらいの人が積極的に活用したかウォッチ
②ネットワークに貢献した人を表彰する制度をつくり、文化の定着へ
③来月や来週ではなく “今” 決める、文化の定着へ

ポイント: 普段は言いづらい「失敗談」なども含めて発信を推奨。表彰制度も合わせて運用することで、オープンで発言しやすい雰囲気を醸成。

誰が :巻き込んでいった関係者
社長・経営幹部・経営企画部・十数名からなるプロジェクトチーム・IT・ビジネス部門長

 

情報の豊かさとは



人々の関心事はそれぞれ異なりますが、ハーバート・サイモンによれば組織の <情報の豊かさ>とは、<膨大な情報源>から、人々の(希少な)関心事を効率的に<配分>できている状態を指します。それを式にすると以下のように表すことが出来る。

        新規性 × 話題性

情報価値  = ————————

         近接性(距離)

例えば、遠く離れた国の旅客機が行方不明になったことは重大な事ですが、隣人が行方不明になったということは規模が小さくとも身近な故に話題にのぼります。また、興味がなくともiPhone発売というニュースの 新規性 は情報に価値を加えます。

これらの変数のうちどれを重視するかは個人の趣向によって異なりますが、いずれも満たさない情報は、たとえ手間暇かけて分析したビッグデータであっても骨折り損に終わります。大規模な予算で作られたTVよりも、Facebookのようなソーシャルメディアが存在感を高めるのもこうした理由があると思います。

20世紀のTVや新聞といったメディアは技術的に分母を大きくすることが出来なかったため、薄く広い情報を流すことで分子を大きくしてきました。しかし、現在では技術革新によりコストをかけずに、それぞれの趣向に沿ったパーソナライズされた情報も提供できるようになりました。つまり、企業の中でもこれをどう活用しようと考えなくてはなりません。

現在、世界の選択可能な情報量は消費可能情報量の2万倍と言われますが、これらをすべて消費することは不可能です。またそれをする意味もないでしょう。これから必要な情報戦略のひとつの鍵は、YammerやDelve のようなソーシャルテクノロジに用いた個人個人の要求に合わせた効率的な情報配分なると思います。それによりはじめて、膨大な「データ」は単なる文字の羅列から、価値ある「情報」に姿を変えるわけです。

The Responsive Organization

YammerのCTO、Adam Pisoniが “The Responsive Organization” と題したメッセージとともにエンタープライズソーシャルの重要性を示しています。この言葉は「Responsive Web Design」という言葉を考えるとわかりやすいでしょう。Webデザインの世界では、次々に登場するスマートフォンや、コンピューター、タブレットなどのデバイス環境に、デザインをいち早く対応させていくことが非常に重要なタスクになっていますが、その対応が少しでも遅れると売上に非常に大きな影響を与える。故にレスポンシブなデザインは生命線ともいえるわけです。The Responsive Organization とはこれを組織に置き換えた考え方であり構えです。「変化の激しい市場に対して」「顧客の細やかなニーズに対して」レスポンシブでなければこの先大企業ですらどうなるかわからない。ジャック・ウェルチの名言にあるように、「組織の変化の速度を外部の環境変化の速度が上回れば組織の終焉は近い。」 いま求められるのは組織をあげた対応力です。


スペインのファッション小売業者にZARAがあります。 ZARAでは店舗スタッフが、顧客が店にない特定の種類の衣類を求めている事に気付いたならば、即座にその情報を製品チームにフィードバックすることによって、2週以内にプロトタイプの製品を店舗にデリバリーされる仕組みがあるといいます。ZARAではそうした試みが日常繰り返されています。ITの世界ではアジャイル開発の概念に慣れていますが、不確実性の高い未来に対しては、膨大な資源を投資することなく簡単にテストすることができることが極めて重要になる。彼らは現場に十分な権限を与えることで、顧客のニーズに対して迅速な軌道修正を行い、また社内ネットワークを介して様々な専門家とダイレクトにつながることで、通常の何倍ものスピードで意思決定を行う。そうしたポジティブなフィードバックループを組織の中にデザインすることで組織の対応力を高めているのです。

時代の移り変わりは激しく、インターネットのタイムラインの上では常に顧客からのフィードバックであふれています。激しい変化に組織が迅速に対応するためには、迅速なコミュニケーションが必要になりますが、従来型のメール リプライにかかる所要時間は、なんと平均5時間とされています。これでは対応している間に顧客のニーズは変わってしまいます。これまでのコミュニケーション方法を改め、リアルタイムな情報交換とネットワーク活かしたコラボレーションこそが成功の鍵となる。これを助けるのがエンタープライズソーシャルだと思います。

Pisoniは「The Shift」としてレスポンシブな組織のつくる6つの要素を示しています。またPisoniは社員にチカラを与えモチベートさせることが重要だということを繰り返し強調し、下記の要素をプロセスに刷り込み体系化することが変化に強い組織を作りあげると説明しています。

働く動機の二要因モデル

心理学者の市川伸一氏は、<学ぶ意欲の心理学>という本の中で、人が学習するモチベーションは大きく次の6つのタイプに分類されると説明しています。

  1. 実用志向(仕事や生活に活かすために)
  2. 報酬志向(報酬を得る手段として)
  3. 訓練志向(知力を鍛えるために)
  4. 自尊志向(プライドや競争心から)
  5. 充実志向(学習自体が楽しいから)
  6. 関係志向(他者につられて)

報酬のために行われる仕事と、夢や目標のためになされる仕事では、パフォーマンスに違いが出てくる。前者は最低限のコマンドを実行するだけということになりがちで、後者は積極的な問題解決や他者とのコラボレーションを求めていく。

ダニエル・ピンクの著書「モチベーション3.0」は、人のやる気を活性化させるために内発的動機付けに焦点を向けた本でしたが、市川氏がいう ⑤ の充実思考はその典型にあたり、逆に②の報酬思考と呼ばれるものは、外発的動機付けの典型となる。組織内での自らの地位を獲得するためのプロモーションこそが重要と感じているものであれば、仕事での振る舞いも変わってくるというわけです。

上図は「学習動機の二要因モデル」をもとに作成したものですが、上段は「仕事」下段は「作業」になりがちです。

市川氏によれば、上に属する者は物事の「本質」や「なぜ(Why)」の部分に深く関与することから、問題に例外が発生した際の柔軟性や解決力が高いとされ、下に分類されるものは、物事に対しての「処理」が優先されるため例外対応に弱くなるとされるます。

このような社員の志向性を知った上で計画を立てると、効果的に社員に刺激を与えることが出来る筈です。